2009/10/30

よく分からないという不安

亀井さんが何をしたいのかが分からない。

quoted from:郵政マネー、市場は亀井担当相/斎藤社長の「寝技」警戒 | Reuters

今回の人事では、社長交代に加えて郵政出身者が取締役に就いた。これを受けて、「郵政OBが復権して古い企業体質に戻るのではないか」(同)との懸念もくすぶる。リスク資産投資の積極化に向けて、民間金融機関から人材を迎え入れて現在の運用体制が構築されてきただけに、人事が運用体制に与える影響を見極めたいとする市場参加者は少なくない。日本郵政が保守的な運用姿勢を鮮明にした場合、郵政マネーが国債管理政策に組み込まれるとの見方も出ている。

そうしたことが現実に起これば、日本売りにもつながりかねない。為替市場では「日本郵政が国債投資を強化して財政の受け皿となり、財政拡大に歯止めがかからなくなれば、円売り材料になるとの受け止めもある」(バークレイズ銀行・チーフFXストラテジストの山本雅文氏)との声が出る。



郵政と財務OBを据えたことで、あんまり詳しくない私でも「あー、ネゴネゴするための人事かな。以前のやり方に戻すのか。」と思ったぐらいで、やっぱり国債の引受先ですよね、と誰もが思う。

しかし、やりたいことはまぁ、行動から推測したとして、「なぜそんなことをするのか?」が浅学な私にはどうにもよく分からない。

モラトリアムは、やり方は極端すぎるが、意図は分からなくは無い。中小企業の資本体力が低下していることは分かっているし、そこを支援しましょう、というのなら、まぁ、それもそうだな、と思う。

でも、郵政政策の揺り戻しについては、意図が分からない。

まぁ、中小企業支援というのも分からないではないが、それこそ郵貯を使う理由が無い。あんな大金、国内に投資する先があるのかしら。しかも、かなりリスクが高いでしょうし。

たしかにゴールドマンに資金運用をやらせるのには抵抗があるかもしれない。でも、それこそ監視していればいいだけのことで、こちら側としては、「雇った以上は、きっちりリターンを出せよ」と利用すればいいだけの話と思うんですが、どうなんでしょう。利害が一致すれば、それで事足りる、とはならないのでしょうか。

大体、今まで二人でしたっけ?ちょっとソースは忘れたので嘘かもしれませんが、たかだか数人で郵貯の資産運用していたんですよね。そんなもん、国債買う以外に何もできないでしょうよ。で、それはあまりにも無駄だ、ということで民営化されたと思うのですが、さて国営方向に戻すことで、有効活用が図られるんでしょうか。

うーん。やっぱりよく分からない。

郵便事業については、民営化でも国営化でも個人的にはどちらでもよいです。リターンと公平性のバランスを見てやってください。個人的にはベースは民営化で、産業の無い地方では、効率重視、という訳にもいかないでしょうから、そこは別途やり方を考える、で方向性はいいと思うのですが。細かい議論はあるとは思いますが。それこそ知恵を絞らなければならないことでしょうね。

2009/10/28

ロジックと嘘

ずいぶん古いネタでいまさらですが。

quoted from:「2と1は等しい」 数学界で論議

「2と1は等しい」 数学界で論議

2と1が数学的に等しいことを証明したとされる論文が数学界で話題になっている。今年1月に提出された1ページにも足りない小さな論文だが、いまだに反証できておらず、このままでは数学の根本条件そのものにぐらつきが生じる可能性もある。


今回の論文は2と1が等しいという、一般的な通念とは大きく異なる結果を示しており、万が一この論文が正しいということが証明されれば、ユークリッド幾何学の根本を揺るがす大きな一石となることは間違いない。

いわゆるひとつのジョークというやつですね。プログラムをやってる人や代数幾何の授業をまじめに受けていた人は瞬時に気づくと思います。

ゼロ除算はそもそも未定義なので、4行目の式から5行目の式へは移行できない、ということですね。

こういうあからさまに結果がおかしい「2=1」みたいな結論も、それっぽくロジックを組むと、それっぽく見えてしまうあたりが、人を騙すときのミソなんですかね。

会社で仕事をしていると、こういう理論をよく見かけるんですよね。結論は明らかに間違っているのに、そこまでのプロセスに間違いがあることを認めない、というか疑わない、という事態がよくあります。

結論が明らかに間違ってたら、そりゃ、そこに行くまでの間にどっか間違いがあるんとちゃうのん?と普通に私は思うのですが、上の例のように明確に指摘できないことも多いものです。で、指摘できないから間違っていない、という論理展開、という悲しいスパイラル。

2009/10/22

書評 「子どもの最貧国・日本」

いろんな人に読んで欲しい本です。読むととても憂鬱になりますが。

quoted from:子どもの最貧国・日本 学力・心身・社会におよぶ諸影響 山野良一著 | 書評 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン

子どもの最貧国・日本 学力・心身・社会におよぶ諸影響 山野良一著


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OECD26カ国を対象にしたユニセフの調査「子ども貧困リーグ」で、日本は2000年時点で7人に1人が貧困で10番目に子ども貧困率が高い。国内の経済状況を考慮すれば、その後もさらに厳しい数字になっていることは想像に難くない。実は子どもの貧困は先進国でも大きな社会問題で、各国政府はさまざまな対策を講じている。しかし日本の政府は無策であるばかりか、貧困の存在すら認めようとしないという。

著者は米国の児童保護局でも働いた経験を持つソーシャルワーカー。現場での体験や海外のデータ(日本には子どもの貧困に関する調査データがない)を基に、「貧困大国」となりつつある日本の現状に警鐘を鳴らす。


 

本書では、データを提示→各国との比較→統計的な処理→解釈

という、割とまっとうな理論展開されており、いわゆる「論文」を普通の人が読みやすいように「読み物」としようと努力したように見える。とても読みやすい。

とりあえず、読んだ私は現状を認識したのだが、個人的に何ができるのか、というと、まぁ、この本を薦めるぐらいしかできない。ので、紹介。

久しぶりに書籍を読んで、「憂鬱」というか「申し訳ない気持ち」になった。某先生が「知らないことはそれだけで罪なんだ」と言ってたことを思い出す。

知らなくて、知ろうとしなくて、ごめんなさい、と誰に言うでもないけど思う。

もちろん、同情も憐憫もそれこそ、大きなお世話なんだろうけど、それでも、やっぱりこの状況、つまり日本の貧困の実態はどうにかしないと、非常にマズい気はする。特に、日本の片親家庭(主に母子家庭と考えられる)の貧困率は50%を超えていて、その高さは、ある種異常事態であること、これだけでも知っておかなくてはならない。

知っていれば、視点がもっとぐっと、具体的になると思う。

知らなければ、話にもならないんだと思う。

例えば、世の中では、母子加算の復活に種々の議論、やれ賛成だ、やれ反対だ、だのがあるけど、日本の貧困問題の実態は、そもそも、そんなレベルの話ではない。

「もうお米が無いけど、これからご飯どうしようか・・」という人の周りで「この食材は健康にいいんですよ」「いやいや、それはあまり効果が無いという説もあります」「あまり安く売ると、転売する奴も出てきますから」なんてしたり顔で議論しているようなもので、なんというか、そう、まったくお話にならない。

そういう意味で、一律のこども手当て給付、という施策は、なんとも無駄で馬鹿馬鹿しくて、そして小馬鹿にしている。

やるべきことをやる、それだけなんだろうけど。

2009/10/20

UIの必要性

それが「競争優位性」になるのなら、積極的に投資するべきとは思います。

quoted from:身近な手本ほど、人は見逃す - 産業動向 - Tech-On!

“機能むき出し”のテレビ・リモコン

テレビのリモコンは、全ての機能が物理的にむき出しになっている。つまり、機械が保有している機能が、ほぼすべてボタンとして表出しているUIなのだ。人間は、機械を操作するために、それぞれのボタンの意味を覚えなければならず、ボタンの数が増えるほどに苦労が増える。

 

実は、ここが疑問だったりします。私自身も、テレビやHDレコーダのリモコンは余りにもあんまりなUIだなぁと、10年来思っていますが、果たしてそう思う人は大多数なのでしょうか?

テレビは耐久消費財とはいえ、随分とコモディティ化した製品、、と思います。(まぁ、まだまだ開発の余地は沢山あるとは思いますが)

で、コモディティであれば「大多数が求める機能」が優先されてしかるべきでしょう。一部のマニアのための機能は、オプションで出すべき、、かなと思います。

家庭では、私は東芝製のHDレコーダーを使用しているのですが、UIについてはまぁ、50歩100歩でしょうか。でも、機能のバージョンアップがあって、その分は別料金だったんですよね。で、ネット経由で機能をダウンロード→インストールという感じでして、こういう体系もいいなぁ、と思った次第です。

何が言いたいかというと、テレビリモコンもオプションで別売りでもいいんじゃないかなー、と思うんですよね。それこそ、iPhoneとかでいいんじゃないでしょうか。iPhoneアプリとして高機能リモコンを販売して、WifiなりBluetooth経由でコマンドを送る、ような。

 

quoted from:身近な手本ほど、人は見逃す - 産業動向 - Tech-On!

iPhoneのUIは、非常によくできているといわれている。直感的な操作性と同時に、時と場合に応じて機能を出し分ける仕組みがうまく取り入れられていることが大きな理由の一つだろう。だが、これが究極ではないと私は思っている。

私はUIの進化には、まだ先があるとにらんでいる。それが、ユーザーに助言を与え、教育するコーチングの概念を含んだUIだ。iPhoneは、その豊富な機能や面白さをユーザーに理解させていくプロセスが、設計概念に含まれていないのだ。

お手本は身近なところに

コーチングの概念を入れたUIのヒントは、とても身近なところにある。家庭用ゲーム機とそのソフトだ。ゲームソフトのUIは、ネット業界のUIに比べ、20年近く先を行っていると思っている。

例えば、ドラゴンクエストのようなロールプレイング・ゲーム(RPG)では、キャラクターがあるレベルにならないと使えないコマンドがあり、それはゲームを始めたばかりの時には見えない。ゲームを進めて行くうちに、キャラクターが成長し、あるレベルに達すると必要な機能が使えるようになる。

 

概ね同意なんですが、その理屈がそのまま家電に適用できるかなー、というのも疑問です。ゲームにおいてはユーザビリティというのが、割と市民権を得た評価項目かなー、と思うのです。何せ、マウスもキーボードも使えない、十字キーと数個のボタンで、色々遊ぼうと思うと、ユーザビリティのプアさはそのままストレスにつながりますしね。ゲームでストレスというのは、致命的でしょう。

でも、テレビにそれを求める人はマジョリティなんでしょうか?、という話です。これがどうもよく分からない。みんな不満には思ってそうな気もするけど、同時に、どうでもいいと思っている人が大多数のような気もするんですよね。
 

少し脱線しますが、ちょっとコストの話をしてみます。

まぁ、この手のUI機能をのっけるなんて話は良く出てくるし、iPhone的なUIはアイデアレベルでは、たくさんあって、試作品レベルなら、いくつかあることを知っていますが、製品化された、っていうのはほとんんど無いんじゃないでしょうか。私が知らないだけかもしれませんが。

で、それにはメーカーの理屈がありまして。

1円2円単位でコストダウンに心血を注いでいる家電製品に、WifiやらBluetoothのっけて、コストが上がったとして、「で、売り上げはどれだけ伸びるの?」という話になるんですよね。

製品にも因りますが、メーカー製品の原価は大体20%程度ですので、コストが1割アップしたら、売り上げ(単価x数量)が5割以上増えないとお話にならない、という訳です。

例えば、売価5万円の製品で、コストが1000円上がったら、単価を55,000円に設定して、で売上数量がそこそこ増える、ぐらいの「魅力」が無いと、実装する意味がないんですよね。

そこにいくとですね、UI開発にもう少し投資しましょうなんて話を開発サイドに持っていくと、

「で、そのUIを実装して、売り上げはどれだけ増えるの?以前や他社と比べて何がどれだけ良くなるの?」→「売り上げ予想はできませんが、ユーザーのニーズがあることは確かです」→「リターンが数値で見えないものに、投資はできない。他にやらなければならないことは山ほどある。」

と、いう会話になるんですよね。つまるところ、UIの魅力は数値化が難しいんです。色々手法はありますが、それが「売り上げ増」につながる、とはなかなか言えないし、まして、

「A社の同等製品に比べてUI魅力度が23%ほど勝っています」なんて言えないんですよね。いや、言えなくは無いのですが、説得力が無い、という方が正確かもしれません。

そんなわけで、開発サイドでは「UIが大切なことはなんとなく分かるんだけど、どうしても優先順位を下げざるを得ない」という状況が多いんだと思います。

個人的な感想を言えば、UIもデザインも、「企業文化」だと思うんですよね。だから、iPhoneはAppleにしか作れなかったと思うんですよ。技術的にではなくて企業文化的に。別に技術的には日本のメーカーだって作れるとは思うんですけど、まぁ、アレが許されるメーカーというのも、日本には余り無いかなー、とも思うのです。敢えて言えばソニーぐらいでしょうか。

とは言いつつも、別に悲観はしておりません。日本の技術者の皆さんは、私の知る限りでは優秀な方が多いので、「ユーザーが求めている」ことが明確に分かれば、そこに向かって最適化すると思うんですよね。ほんと、優秀な人が多い。求められれば、案外、答えちゃうんですよね、エンジニアの皆さん方は。

後は、それが売り上げや利益率に明確に貢献したり、株価やブランド価値が上がったり、となれば、自然とそこに最適化されるでしょう。まぁ、時すでに遅し、かもしれませんが。それは、仕方の無いことでしょうね。